この発表をどのくらい待ち望んだだろうか。もうすでに完結はあきらめていて、新刊情報を追ってすらいなかった。そんな中での小市民シリーズ4部作の完結編発売の発表である。
「冬期限定ボンボンショコラ事件」
小市民シリーズは米澤穂信先生の青春・日常ミステリ。米澤先生の青春ミステリといえば、古典部シリーズが有名であるが、小市民シリーズも同じくらい面白い作品である。主人公とヒロインの性格に少し癖があるので、ちょっと受け付けない人も出てくるかもしれないが、「クドリャフカの順番」や「愚者のエンドロール」が好きな人は小市民シリーズも楽しく読めると思う。
この小市民シリーズ、「春期限定イチゴタルト事件(2004年)」「夏期限定トロピカルパフェ事件(2006年)」「秋期限定栗きんとん事件(2009年)」と短編1冊が出ていたが、完結編であると思われる「冬期限定」は出る気配が全くなかったのだ。
「秋」から14年。忘れたころに「冬」はやってきたのだ!!終わらない青春などない。私は自分の目が黒いうちに、その結末を見る機会が得られて非常に嬉しい。
「冬期」は完結編だろうから、主人公たちの関係性の進展を祝うようなお菓子である「チョコレート」がタイトルとなることは容易に想像できた。では、実際はどんなタイトルだったのか?そう。「ボンボンショコラ」だ。これはすごい。
・ショコラ → 期待を裏切らない結末の暗喩。難かしらの形で主人公たちの関係が動くような物語であることが予感できる
・ボンボン → 大人の味は青春の終わりを暗示している。それは、子どもにとっては想定外の味。甘いだけではない、苦くもあり、そしてコク深い味わいを美味しく感じるには高校生は少し若すぎるだろうか。
米澤先生の青春ミステリは、登場人物の「挫折や諦めを通した成長」がしばしば描かれるが、今作もそれをやるぞ!という意気込みがタイトルからひしひしと伝わってくる。
主人公とヒロインをくっつけるだけで満足か?それだけの終わりなぞ米澤先生が許してくれるはずがない。「冬」の米澤節に期待が膨らむ。